技術書ナビ データレポート

長く読まれ続ける技術書と、最近定番になった技術書

Zenn・Qiita・企業テックブログで2019〜2026年に技術書を紹介した記事1,389本について、本ごとに「その年に技術書を紹介した記事のうち、その本を紹介した記事の割合」を年別に並べた。毎年紹介され続ける定番書と、ここ数年で定番になった本、一時的に話題になった本、紹介が減った本を、推移の形で分けている。年ごとのランキングは年別レポートにあり、このページはそれを年をまたいで見たものである。

公開日: ・対象:2019年1月1日〜2026年10月8日に公開された記事 ・作成:つみき

要点

  • 8年のうちほぼ毎年紹介され、紹介の割合も大きく変わっていない「長く読まれ続ける本」は32冊あった。最も多く紹介されたのは『リーダブルコード』で、毎年、技術書を紹介した記事の8.9%〜19.4%に登場する。32冊のうち18冊は出版から10年以上たった本である。
  • 2019〜2021年にはほとんど紹介されず、2024〜2026年の3年続けて紹介された「最近定番になった本」は13冊。『世界一流エンジニアの思考法』、『改訂新版 良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門』、『Tidy First?』が上位で、8冊が翻訳書だった。
  • 紹介される本は年々古くなっている。出版から10年以上たった本の紹介は、2019年の13%から2026年の29%に増えた。媒体ごとに数えても、最初の年と最新の年を比べるとQiita・Zenn・企業テックブログのどれでも上がっている。
  • 古い本の割合は分野で大きく違う。ネットワーク・HTTPでは紹介の48%が出版10年以上の本なのに対し、クラウド・インフラ運用では4%にとどまる。
  • 出版から10年以上たった本の紹介337件の記述を分類すると、古い本を勧める書き方で最も多いのは「多くの人が勧める名著だから」(94件)だった。古いと断ったうえで勧めた紹介は64件、古くて使いにくいと書いた紹介は4件である。

調べ方の概要

技術書ナビが集めた紹介(本×記事)のうち、技術書を紹介した記事が60本以上ある2019〜2026年の1,389本・4,652件を使った。記事の数は2019年の67本から280本(2024年)まで年によって4倍ほど違うため、件数ではなく「その年の紹介記事に占める割合」で比べる。同じ記事のZennとQiitaへの同時投稿は1本、版違い(第2版・新装版など)は同じ本として数えた。

そのうえで、2019〜2021年(初期)と2024〜2026年(直近)の割合を比べ、本を4つに分けた。基準は次のとおりで、詳細は調べ方の詳細にまとめた。2026年(10月8日まで)は年の途中までの値である。

本の分け方
分類 基準 冊数
長く読まれ続ける 8年のうち7年以上で紹介され、紹介記事が12本以上。直近の割合が初期の0.4〜2.5倍 32
最近定番になった 直近の割合が1.0%以上で、初期はその1/3以下。直近の3年すべてで紹介され、1年に75%を超えて集中していない。直近に紹介した書き手が5人以上 13
一時的に話題になった ある年に5本以上・3人以上が紹介し割合が2.0%以上。その前後の年と最新の年は、その年の1/3以下 11
読まれなくなった 初期の割合が1.5%以上で、直近は初期の1/3以下 14

「割合」は、その期間に技術書を紹介した記事のうち、その本を紹介した記事の割合(期間内の記事を合算して計算)。分類の対象は、対象期間に2本以上の記事で紹介された613冊。

長く読まれ続ける本

8年間ほぼ毎年紹介されたのは32冊で、首位は『リーダブルコード』だった

次の表は、長く読まれ続ける本を対象期間の紹介記事の多い順に並べたものである。棒は2019年から2026年までの割合で、高さは本ごとに最大の年を基準にした相対値になっている(各年の値は棒にカーソルを合わせると出る)。

長く読まれ続ける本(2019〜2026年の紹介の割合の推移)
# 書名 出版 2019→2026 紹介記事 初期 直近 変化
1 『リーダブルコード』 2012 169 15.4% 10.8% やや減
2 『Webを支える技術』 2010 62 6.3% 3.5% やや減
3 『マスタリングTCP/IP―入門編―(第6版)』 2012 47 4.9% 2.3% やや減
4 『体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方 第2版 脆弱性が生まれる原理と対策の実践』 2011 47 3.9% 3.2% 横ばい
5 『プリンシプル オブ プログラミング3年目までに身につけたい一生役立つ101の原理原則』 2016 46 2.8% 2.5% 横ばい
6 『達人プログラマー(第2版)』 2016 41 3.1% 2.7% 横ばい
7 『リファクタリング(第2版)』 2014 41 4.2% 2.5% やや減
8 『Clean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計』 2018 39 3.5% 2.5% やや減
9 『テスト駆動開発』 2017 37 3.5% 2.7% やや減
10 『SQLアンチパターン 第2版』 2013 34 2.1% 2.7% やや増
11 『ネットワークはなぜつながるのか 第2版 知っておきたいTCP/IP、LAN、光ファイバの基礎知識』 2007 34 2.5% 2.8% 横ばい
12 『ドメイン駆動設計入門 ボトムアップでわかる! ドメイン駆動設計の基本』 2020 31 3.1% 1.7% やや減
13 『現場で役立つシステム設計の原則』 2017 30 3.1% 1.8% やや減
14 『達人に学ぶSQL徹底指南書 第2版 初級者で終わりたくないあなたへ』 2018 29 2.8% 1.8% やや減
15 『エンジニアリング組織論への招待』 2018 28 2.5% 1.3% やや減
16 『Web API: The Good Parts』 2014 27 1.8% 1.7% 横ばい
17 『[試して理解]Linuxのしくみ』 2018 27 1.8% 2.0% 横ばい
18 『[改訂新版]プロになるためのWeb技術入門』 2010 27 2.5% 1.8% やや減
19 『エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計』 2011 26 2.1% 1.8% 横ばい
20 『アジャイルサムライ−達人開発者への道−』 2011 26 2.8% 1.7% やや減
21 『データ指向アプリケーションデザイン』 2019 25 1.1% 1.5% やや増
22 『入門 監視』 2019 24 3.5% 1.4% やや減
23 『Team Geek』 2013 21 2.8% 1.1% やや減
24 『プロを目指す人のためのRuby入門[改訂2版] 言語仕様からテスト駆動開発・デバッグ技法まで』 2017 18 2.5% 1.0% やや減
25 『SQL 第2版 ゼロからはじめるデータベース操作』 2016 17 2.1% 1.1% やや減
26 『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』 2018 16 1.1% 0.8% やや減
27 『スッキリわかるJava入門 第5版』 2011 16 1.8% 1.0% やや減
28 『新しいLinuxの教科書 第2版』 2015 15 1.8% 1.0% やや減
29 『1冊ですべて身につくHTML & CSSとWebデザイン入門講座[第2版]』 2019 15 0.7% 0.8% 横ばい
30 『SRE サイトリライアビリティエンジニアリング』 2017 15 1.8% 0.8% やや減
31 『Amazon Web Services基礎からのネットワーク&サーバー構築改訂4版』 2017 12 1.1% 0.8% やや減
32 『コンピュータはなぜ動くのか 第2版 知っておきたいハードウエア&ソフトウエアの基礎知識』 2003 12 1.1% 0.4% やや減

出版は、同じ本の版のうちいちばん古い版の出版年(翻訳書は日本語版)。初期は2019〜2021年、直近は2024〜2026年の割合。変化は直近÷初期が1.25以上を「やや増」、0.8以下を「やや減」とした。2026年(10月8日まで)の棒は薄い色で示した。

『リーダブルコード』は8年すべてで紹介され、紹介記事は合計169本、書き手は150人にのぼる。割合は初期の15.4%から直近の10.8%に下がったが、それでも技術書を紹介した記事のおよそ9本に1本がこの本を挙げている。

2位以下には、『Webを支える技術』・『マスタリングTCP/IP―入門編―(第6版)』・『体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方 第2版 脆弱性が生まれる原理と対策の実践』のようなWeb・ネットワーク・セキュリティの基礎の本と、『達人プログラマー(第2版)』・『リファクタリング(第2版)』のような設計・コードの書き方の本が並ぶ。どれも特定の言語やサービスの使い方ではなく、仕組みや考え方を扱う本である。表のうち「やや減」の本も、割合が初期の0.4倍以上を保っている。

10年以上前の本と、勧める理由

出版から10年以上たっても、直近3年で5本以上の記事に紹介された本は24冊あった

2016年以前に出た本(版違いはいちばん古い版で判定)のうち、2024〜2026年にも5本以上の記事で紹介された本を、直近の紹介記事の多い順に並べた。「長く読まれ続ける本」の基準を満たさない本も含む。

出版から10年以上たち、直近3年も紹介が続く本
書名 出版 2019→2026 直近の
紹介記事
直近の
割合
種類
『リーダブルコード』 2012 77 10.8% 翻訳書
『達人に学ぶDB設計徹底指南書 第2版』 2012 28 3.9% 国内の本
『Webを支える技術』 2010 25 3.5% 国内の本
『体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方 第2版 脆弱性が生まれる原理と対策の実践』 2011 23 3.2% 国内の本
『ネットワークはなぜつながるのか 第2版 知っておきたいTCP/IP、LAN、光ファイバの基礎知識』 2007 20 2.8% 国内の本
『達人プログラマー(第2版)』 2016 19 2.7% 翻訳書
『SQLアンチパターン 第2版』 2013 19 2.7% 翻訳書
『プリンシプル オブ プログラミング3年目までに身につけたい一生役立つ101の原理原則』 2016 18 2.5% 国内の本
『リファクタリング(第2版)』 2014 18 2.5% 翻訳書
『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK【増補改訂版】 スクラムチームではじめるアジャイル開発』 2013 18 2.5% 国内の本
『マスタリングTCP/IP―入門編―(第6版)』 2012 16 2.3% 国内の本
『[改訂新版]プロになるためのWeb技術入門』 2010 13 1.8% 国内の本
『エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計』 2011 13 1.8% 翻訳書
『Web API: The Good Parts』 2014 12 1.7% 国内の本
『アジャイルサムライ−達人開発者への道−』 2011 12 1.7% 翻訳書
『オブジェクト指向でなぜつくるのか 第3版 知っておきたいOOP、設計、アジャイル開発の基礎知識』 2011 9 1.3% 国内の本
『Team Geek』 2013 8 1.1% 翻訳書
『SQL 第2版 ゼロからはじめるデータベース操作』 2016 8 1.1% 国内の本
『スッキリわかるJava入門 第5版』 2011 7 1.0% 国内の本
『新しいLinuxの教科書 第2版』 2015 7 1.0% 国内の本
『ゼロから作るDeep Learning』 2016 6 0.8% 国内の本
『プログラムはなぜ動くのか 第3版 知っておきたいプログラミングの基礎知識』 2007 5 0.7% 国内の本
『エッセンシャル スクラム』 2014 5 0.7% 翻訳書
『パターン認識と機械学習 上』 2012 5 0.7% 翻訳書

この中で、直近に割合を大きく伸ばしたのが『達人に学ぶDB設計徹底指南書 第2版』である(初期1.4%→直近3.9%)。2024年に第2版が出ており、このレポートでは版違いを同じ本として数えているため、新しい版の紹介が初版から続く数字に加わっている。

古い本を勧めるとき、記事は何と書いているか

出版から10年以上たった本の紹介のうち、本文の書名の周りに「古い」「名著」「定番」「今でも」などの語がある337件を、記事がその本の古さや評価について何を書いているかで分類した。本の古さ・評価に触れていたのは167件で、内訳は「名著・定番・普遍的と書いている」99件、「古いと断ったうえで勧めている」64件、「古くて使いにくいと書いている」4件だった。勧めている163件が挙げた理由(1件に複数付くことがある)は図1のとおりである。

図1 出版から10年以上たった本を勧めた紹介163件が挙げた理由
  • 多くの人が勧める名著だから 94件(58%)
  • 例や技術が古い部分はあると断っている 43件(26%)
  • 考え方・原則は今も通用する 40件(25%)
  • 基礎・仕組みが身につく 20件(12%)
  • 実務で役に立った 10件(6%)

最も多いのは、多くの人が勧める名著・定番として紹介する書き方(94件)で、理由の中身には踏み込まないものが多い。中身に触れた紹介では、技術が変わっても考え方や原則は通用する(40件)、基礎や仕組みが身につく(20件)という説明が続く。一方で43件は、例やバージョンが古い部分があると断っている。古いことを認めたうえで、どこが今も役に立つかを書き分ける紹介が一定数あるということになる。

本ごとの記述の例を挙げる(記事本文からの引用)。

紹介される本の古さ

出版から10年以上たった本の紹介は、2019年の13%から2026年の29%に増えた

記事の公開年と本の出版年の差を「本の古さ」として、年ごとの紹介のうち古さが10年以上の紹介の割合と、古さの中央値を出した(図2)。

図2 年ごとの、出版から10年以上たった本の紹介の割合
  • 2019年 13%(中央値4年)
  • 2020年 14%(中央値3年)
  • 2021年 17%(中央値4年)
  • 2022年 22%(中央値4年)
  • 2023年 22%(中央値4年)
  • 2024年 23%(中央値4年)
  • 2025年 28%(中央値5年)
  • 2026年 29%(中央値6年)

2019年には紹介の13%だった古い本が、2026年には29%を占める。出版から2年以内の新しい本の紹介は38%から28%に下がり、古さの中央値は4年から6年に延びた。

この変化は、記事の媒体の構成が年によって違うこと(Zennは2020年に始まり、2019年は企業テックブログとQiitaだけ)だけでは説明できない。媒体ごとに分けて数えても、年ごとの上下はあるものの、最初の年と最新の年を比べると古い本の割合はどの媒体でも上がっている(表)。

媒体ごとの、出版から10年以上たった本の紹介の割合
媒体 20192020202120222023202420252026
Qiita 13%17%19%26%24%26%29%29%
Zenn --21%23%21%18%30%34%
企業テックブログ 14%8%10%14%20%29%18%22%
記事数(全体) 67104115166225280264168

「-」は、その年のその媒体の記事が20本未満で割合を出していない年。

理由はこのデータだけでは確かめられないが、2つの要因が考えられる。1つは、2019年前後に紹介が多かった2010年代前半の本(表の上位の本の多くがこの時期の出版)が、年を追うごとに「10年以上前の本」の側に入っていくこと。もう1つは、長く読まれ続ける本の紹介が毎年積み重なる一方で、新刊の紹介は出版直後の数年に集まり、その後は減っていくことである。

最近定番になった本

2024〜2026年に3年続けて紹介され、新しい定番になったのは13冊だった

最近定番になった本(直近の割合の高い順)
# 書名 出版 2019→2026 直近の
紹介記事
直近の
割合
種類
1 『世界一流エンジニアの思考法』(2026年は減少) 2023 38 5.3% 国内の本
2 『改訂新版 良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門』 2022 32 4.5% 国内の本
3 『Tidy First?』 2024 18 2.5% 翻訳書
4 『単体テストの考え方/使い方』(2026年は減少) 2022 16 2.3% 翻訳書
5 『ソフトウェアアーキテクチャの基礎 第2版』 2022 16 2.3% 翻訳書
6 『システム設計の面接試験』 2023 16 2.3% 翻訳書
7 『ドメイン駆動設計をはじめよう』 2024 14 2.0% 翻訳書
8 『「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック』(2026年は減少) 2022 13 1.8% 国内の本
9 『プログラマー脳』 2023 9 1.3% 翻訳書
10 『Good Code, Bad Code』 2023 9 1.3% 翻訳書
11 『DNSがよくわかる教科書 第2版』 2018 8 1.1% 国内の本
12 『LeanとDevOpsの科学[Accelerate] テクノロジーの戦略的活用が組織変革を加速する』 2018 8 1.1% 翻訳書
13 『LangChainとLangGraphによるRAG・AIエージェント[実践]入門』 2024 8 1.1% 国内の本

「2026年は減少」は、2026年(10月8日まで)の割合が直近3年の割合の半分未満の本。

13冊のうち11冊は2022年以降に出た本で、出版から数年で毎年紹介される本になった。『改訂新版 良いコード/悪いコードで学ぶ設計入門』は2022年に紹介され始め、その年から長く読まれ続ける本と並ぶ割合(2022年12.7%)になった。割合はその後下がっているが、2026年も紹介が続いている。『世界一流エンジニアの思考法』は2024年に7.1%まで上がったが、2026年は1.2%に下がった。

題材は、設計(アーキテクチャ・DDD・コードの書き方)とテスト、エンジニアの考え方・学び方の本が多い。3冊は2026年に割合が下がっており、来年以降も定番として残るかは、まだ分からない。

一時的に話題になった本

ある年だけ紹介が集まり、その後は減った本は11冊あった

一時的に話題になった本(ピークの年の割合の高い順)
書名 出版 2019→2026 ピーク ピークの
割合
直近の
割合
『ユニコーン企業のひみつ』 2021 2021年 6.1% 0.1%
『イラスト図解式 この一冊で全部わかるWeb技術の基本 第2版』 2017 2021年 6.1% 0.8%
『カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで』 2018 2020年 5.8% 0.4%
『問題解決力を鍛える!アルゴリズムとデータ構造』 2020 2021年 5.2% 0.3%
『レガシーコードからの脱却』 2019 2020年 4.8% 0.8%
『More Effective Agile』 2020 2020年 4.8% 0.0%
『スッキリわかるSQL入門 第4版 ドリル256問付き!』 2013 2021年 4.3% 0.4%
『エンジニアのためのマネジメント入門』 2023 2023年 3.6% 0.3%
『失敗から学ぶRDBの正しい歩き方』 2019 2024年 2.9% 1.1%
『エンジニアリングマネージャーのしごと』 2022 2023年 2.7% 0.6%
『システム運用アンチパターン』 2022 2023年 2.2% 0.0%

7冊は、ピークが出版の年か翌年にあたる。新刊として話題になり、その後は紹介が続かなかった本である。題材は、アジャイル・チームづくり・マネジメントの本が多い。ピークの年の紹介は3人以上の書き手によるもので、1人の連載だけで割合が上がった本は除いてある。

読まれなくなった本

初期に多く紹介され、直近は1/3以下に減った本は14冊。うち5冊は新しい版が出ても紹介が戻らなかった

読まれなくなった本(初期の割合の高い順)
書名 出版 2019→2026 初期 直近 新しい版・後継の確認
『オブジェクト指向でなぜつくるのか 第3版 知っておきたいOOP、設計、アジャイル開発の基礎知識』 2011 4.2% 1.3% 第3版(2021年)が出ている。2026年はまだ紹介がない
『エンジニアの知的生産術』 2018 4.2% 0.1% 同じ著者・同じ主題の後継書は見当たらない
『知識ゼロから学ぶソフトウェアテスト 第3版 アジャイル・AI時代の必携教科書』 2013 3.9% 0.6% 同じ著者の新しい本ではない。テストの分野では『単体テストの考え方/使い方』が2023年以降に紹介を増やした(『単体テストの考え方/使い方』)
『Java言語で学ぶデザインパターン入門第3版』 2004 3.5% 0.4% 第3版(2021年)が出たが、紹介は増えなかった
『プログラムはなぜ動くのか 第3版 知っておきたいプログラミングの基礎知識』 2007 3.1% 0.7% 第3版(2021年)が出たが、紹介は増えなかった
『ゼロから作るDeep Learning』 2016 2.8% 0.8% 続編(❷〜❻)は直近3年の紹介がそれぞれ1本以下。機械学習・データ分析の分野では、直近はLLMの本の紹介が増えている
『ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版]』 2016 2.5% 0.6% 同じ著者・同じ主題の後継書は見当たらない
『改訂3版JavaScript本格入門』 2016 2.5% 0.4% 改訂3版(2023年)が出たが、紹介は増えなかった
『レガシーコード改善ガイド』 2009 2.1% 0.4% 同じ著者・同じ主題の後継書は見当たらない
『オブジェクト指向UIデザイン』 2020 2.1% 0.3% 同じ著者・同じ主題の後継書は見当たらない
『コンピュータシステムの理論と実装 第2版』 2015 2.1% 0.3% 第2版(2024年)が出たが、直近の紹介は少ない
『CPUの創りかた』 2003 2.1% 0.0% 同じ著者・同じ主題の後継書は見当たらない
『Clean Agile 基本に立ち戻れ』 2020 2.1% 0.1% 同じ著者の『Clean Architecture』は毎年紹介されている
『GitHub実践入門』 2014 2.1% 0.0% 特定のサービスの使い方を扱う本で、同じ著者の新しい本は見当たらない

版違いは同じ本として数えているので、「新しい版に移ったので古い版の紹介が減った」という減り方はこの表には現れない。それでも、5冊は対象期間中に新しい版が出たのに紹介が減っていた。同じ著者の新しい本に紹介が移った例は見当たらず、同じ分野で直近に紹介が増えた本を後継の候補として挙げられたのも1冊だけだった。

題材を見ると、オブジェクト指向やデザインパターンの入門、コンピュータの仕組みを図解する入門書のように、初期に入門書として勧められていた本が多い。同じ位置づけで直近に紹介が多いのは、最近定番になった本の表にある設計入門書だが、どの記事も「この本の代わりに」とは書いていないため、置き換わったかどうかは分からない。

分野ごとの違い

古い本が長く読まれるのはネットワーク・HTTPとデータベース・SQL、入れ替わりが速いのはクラウド・インフラ運用と機械学習・データ分析

本に付いたタグで分野を分け、分野ごとに、紹介のうち出版から10年以上たった本の割合と、直近3年の紹介のうち2022年以降に出た本の割合を出した。1冊が複数の分野に入ることがあり、タグの付き方によっては分野の中心でない本も含まれる。

分野ごとの、古い本と新しい本の割合
分野 紹介 10年以上
前の本
古さの
中央値
直近の紹介の
うち新しい本
ネットワーク・HTTP 489 48% 9年 23%
データベース・SQL 283 33% 7年 17%
セキュリティ 186 32% 3年 54%
OS・コンピュータの仕組み 343 30% 6年 25%
設計・コード品質 1,093 28% 6年 39%
フロントエンド 252 25% 3年 48%
アジャイル・チーム・マネジメント 612 23% 5年 35%
テスト 255 14% 3年 55%
機械学習・データ分析 392 10% 2年 68%
クラウド・インフラ運用 521 4% 3年 50%

「直近の紹介のうち新しい本」は、2024〜2026年の紹介のうち2022年以降に出版された本の紹介の割合。

ネットワーク・HTTPでは紹介の48%が出版から10年以上たった本で、古さの中央値は9年である。HTTPやTCP/IPのように仕組みそのものが長く変わらない分野で、2010年前後に出た本が今も入門書として紹介されている。データベース・SQLも同じ傾向で、SQLやテーブル設計の本は版を改めながら読まれ続けている。

反対にクラウド・インフラ運用では、古い本の紹介は4%しかなく、直近の紹介の50%を2022年以降の本が占める。サービスやツールの変化が速く、本の内容が古くなりやすい分野だと考えられる。機械学習・データ分析も、直近の紹介の68%が新しい本だった。

設計・コード品質は紹介の数が最も多い分野で、古い本(28%)と新しい本(直近の39%)の両方が多い。長く読まれ続ける本と最近定番になった本の両方がこの分野に集まっている。

翻訳書と国内の本

10年以上前の本は国内の本が多く、最近定番になった本は翻訳書が多い

分類ごとの翻訳書の割合
分類 冊数 翻訳書 割合
出版から10年以上たち、直近も紹介が続く本 24 9 38%
長く読まれ続ける本 32 13 41%
最近定番になった本 13 8 62%

出版から10年以上たっても紹介が続く24冊のうち、翻訳書は9冊(38%)で、残りは国内の著者の本だった。Web・ネットワーク・SQL・セキュリティの基礎を扱う国内の入門書が、古い本の多くを占めている。最近定番になった13冊では、翻訳書が8冊(62%)と多い。アーキテクチャやテストの考え方を扱う海外の本が、翻訳されて数年のうちに定番になっている。

翻訳書の出版年は日本語版の年で数えている。原書はさらに数年前に出ていることが多いので、内容の古さでいえば翻訳書はこの表より古い。

年別レポートとの関係

年別ランキングでは『リーダブルコード』が8年のうち7年で1位、ほかの本は年ごとに順位が動く

年別レポートの総合ランキング(上位30冊)での順位を、長く読まれ続ける本の上位と、最近定番になった本の上位について並べた。順位はその年のレポートの表へのリンクになっている。

「-」は上位30冊に入らなかった年。年別レポートは紹介(言及)の数の順で、同数のときはいいねの合計などで並べている。このページの割合とは数え方が少し違うので、割合の順と順位が一致しない年がある。

数字を読むときの注意

  • 数えているのは「紹介した記事の割合」で、売れた部数や読まれた回数ではない。記事を書く人が紹介したくなる本(入門書・定番書)ほど多く出る。
  • 1年の記事は67〜280本で、1冊の本の紹介は年に数本〜十数本である。紹介の少ない本は、1〜2本の記事で割合が大きく動く。分類の基準に書き手の人数を入れたのはこのためである。
  • 媒体の構成は年によって違う(Zennは2020年に始まり、企業テックブログはさかのぼって集めた記事が古い年に多い)。媒体ごとの割合を平均した値で分類し直しても、70冊のうち68冊は同じ分類になった。分類が変わったのは『入門 監視』、『コンピュータはなぜ動くのか 第2版 知っておきたいハードウエア&ソフトウエアの基礎知識』で、境界に近い本である。
  • 出版年は、技術書ナビのデータにある版のうちいちばん古い版の年である。データにない古い版がある本は、実際より新しく数えている。翻訳書は日本語版の出版年である。
  • 2026年(10月8日まで)は年の途中までで、記事の数も少ない。最新の年の割合は、年末までに変わる可能性がある。

調べ方の詳細

データ源・期間・分類の基準・記述の分類と確認の結果

データ源と期間

技術書ナビが集めたZenn・Qiita・企業テックブログの記事のうち、技術書を紹介した記事1,471本(紹介4,936件)から、技術書を紹介した記事が年に60本以上ある2019〜2026年の1,389本を使った。それより前の年は記事が年に数本〜20本ほどで(合計82本)、1本の記事で割合が数%動くため外した。ZennとQiitaへの同時投稿は1本と数え、版違いは代表の版にまとめた(サイトのランキングと同じ数え方)。

割合と分類

本ごとに、年ごとの「その本を紹介した記事の数 ÷ その年に技術書を紹介した記事の数」を出した。初期(2019〜2021年)と直近(2024〜2026年)の割合は、3年分の記事を合算して計算した。分類は上から順に判定し、どれにも当てはまらない本は表に載せていない。

  • 長く読まれ続ける本:8年のうち紹介がない年が1年以下、紹介記事が合計12本以上、直近の割合が初期の0.4倍以上2.5倍以下
  • 最近定番になった本:直近の割合が1.0%以上、初期の割合が直近の33%(1/3)以下、直近の3年すべてで紹介があり、直近の紹介のうち1年に集中した割合が75%以下、直近に紹介した書き手が5人以上
  • 一時的に話題になった本:割合が最も高い年(ピーク)が最新の年の2年以上前で、ピークの年に5本以上・3人以上が紹介し、割合が2.0%以上。ピークより前と後の年の割合(合算)と最新の年の割合が、ピークの1/3以下。ピークが2019年の本は、出版がその前年以降のものに限った
  • 読まれなくなった本:初期の割合が1.5%以上で、初期に5本以上・3人以上が紹介し、直近の割合が初期の1/3以下

書き手は記事の著者名で数えた(企業テックブログはブログ単位になることがある)。媒体による偏りを確かめるため、各年でその年の記事が20本以上ある媒体ごとに割合を出して平均した値でも同じ分類をし、結果が一致するかを見た。

古い本を勧める記述の分類

記事の公開時点で出版から10年以上たっていた本の紹介のうち、技術書ナビの紹介の要約か、記事本文の書名の周り(前後500字、最大2か所)に「古い」「名著」「定番」「今でも」「普遍」「年前」「刊行」などの語を含む紹介を候補にした(対象期間内は337件)。候補ごとに要約と本文の抜粋をLLMに渡し、記事がその本について「古いと断ったうえで勧めている」「名著・定番・普遍的と書いている」「古くて使いにくいと書いている」「どれでもない」のどれにあたるかと、勧める理由(複数可)、本文からそのまま写した短い引用を出させた。

1回目の分類(GPT、codex exec)から無作為に抜いた45件を人が確かめたところ、正しかったのは約3分の2で、とくに同じ記事の別の本についての記述を取り違える誤りと、表の中の短い記述の見落としが多かった。そこで、確かめた45件はその場で直し、残りの候補は注意点を加えた指示でLLM(Claude Sonnet)に分類し直した。分類し直したラベルから、判定ごとに無作為に計45件(「古いと断ったうえで勧めている」15件・「名著・定番・普遍的と書いている」15件・「古くて使いにくいと書いている」3件・「本の古さ・評価には触れていない」12件)を抜いて記事を読んで確かめると、43件(96%)が正しかった。判定ごとに抜いた件数を揃えているので、この割合は全体の正解率そのものではない。見つけた誤りは直してから集計した。引用は、集計時に記事本文にそのまま含まれるかを機械的に確かめ、含まれないものは使っていない。ページに出した引用はすべて人が記事を読んで確かめた。

  • 『リーダブルコード』:「有名な本だったので読んだ」という記述だけで、名著・定番とは書いていない。「どれでもない」に直した
  • 『エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計』:記事は「古いと思っていた」と書くが、続く記述はDDDという考え方についてで、本を勧めてはいない。「どれでもない」に直した

翻訳書の判定

著者名に英字の名前か中黒入りのカタカナの名前がある本を翻訳書とし、表に出した本はすべて人が確かめて直した(著者名に英字の筆名や法人名を含む国内の本など)。

限界

  • 技術書ナビが集めた記事は、Zenn・Qiitaの人気の記事と、一部の企業テックブログに偏っている。技術書を紹介するすべての記事ではない。
  • 分類の基準(1/3、0.4〜2.5倍など)は、少ない件数でも推移の形が読み取れるように決めたもので、境界の本は基準を少し変えると分類が変わる。
  • 古い本を勧める記述の分類は、語を含む候補だけが対象で、語を使わずに勧めた紹介は数えていない。

引用した記事

本文の[番号]に対応する。企業テックブログの記事は、媒体と公開日だけを示す。

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