任天堂ノスタルジー 横井軍平とその時代 (角川新書)

本書は、任天堂の黎明期を支えた天才開発者・横井軍平氏の生涯と、その革新的な思考法「枯れた技術の水平思考」に迫る一冊です。ゲーム＆ウオッチやゲームボーイといった数々のヒット作を生み出した横井氏の発想の源泉と、その斬新なアイデアの陰にあった苦悩を詳細に描きます。単なるゲーム史の解説にとどまらず、限られたリソースの中でいかにして独創的な製品を生み出すか、というイノベーションの本質に触れることができます。特に、現代においても通用する「枯れた技術」の再活用や、既存の技術を組み合わせることで新たな価値を創造する「水平思考」の考え方は、プロダクト開発や新規事業企画に携わるビジネスパーソンにとって、直接的なヒントとなるでしょう。成功の裏にある挫折や葛藤を通して、人間ドラマとしても深く味わえる点も本書の強みです。技術的な詳細よりも、発想力や開発哲学に焦点を当てているため、エンジニアだけでなく、企画職、経営層、あるいはイノベーションに関心のあるすべての人々にとって、示唆に富む内容となっています。